Developers [Social Enterprise] Summit 2012 (夏サミ) 私的不完全議事録 【natsumi】

7 月 27 日(金)に品川の東京コンファレンスセンターにて開催された「Developers [Social Enterprise] Summit 2012」、通称「夏サミ」に参加してきました。議事録を公開します。

内容や表記などにおかしな所を発見された方は、コメント欄やブックマークコメント、ツイッターなどで教えてください。


クラウドが破壊するもの、想像するもの (新野 淳一氏)

クラウドがもたらす変化

  • あらゆるリソースがソフトウェアで調達可能
  • オンデマンドでスケールアウト・スケールイン
  • 事実上無限のリソース
  • 高度な運用の自動化
  • グローバル展開

クラウドが破壊しそうなもの(1) 従来のシステムインテグレーション

ラクルが得意だったある SI「受注単価が最大 2 桁下がった」

  • ハードウェア不要、インストール不要、チューニング不要
  • PaaS で開発も簡単、短納期、低コスト
  • 売り上げ維持にはより多くの案件が必要に
  • 中小企業が大規模システムに対応

クラウドが破壊しそうなもの(2) 労働集約的なシステム運用

1 年半前の「クラウドごった煮」での議論「SIer で運用担当をしています。PaaS で運用は必要ですか?」「要りません」(クラウド開発経験者)

  • インストール不要、トラブルシュート不要、オートスケールアウト
  • 運用は徹底的に自動化する方向へ
  • モニタリングはちょっと必要か
  • DevOps で開発と運用の区切りはなくなっていくか?

クラウドが破壊しそうなもの(3) オンプレミス、パッケージソフトウェア

クラウドの破壊から逃げよう!

  • 成功するための大事な条件は、成功しやすい市場にいること
  • デベロッパーは破壊から逃れて創造へ向かおう!
  • もちろん、仮説が正しいとは限らない。自分で判断しよう!

クラウドが創造するもの(1) サービスモデル

  • オンサイトサポート不要
  • 小規模でも展開可能、グローバルへ
  • AppStore、マーケットプレイスの登場
  • DevOps 的なオペレーションがカギ

パッケージ展開は規模的に難しかったソフトウェアベンダでも、サービスで勝負できる

クラウドが創造するもの(2) モバイルを含むマルチデバイス展開

  • 主要kの右派クラウド側で実装
  • ビューをデバイスごとに最適化
  • サービス化とセットで、どこでも利用可能

これからのアプリケーション、サービスはマルチデバイス対応が必要になる

クラウドが創造するもの(3) ビッグデータの活用

  • 大規模並列処理、大規模ストレージの普及
  • これまで不可能だった分析処理を実現
  • 何をどう分析するかが重要に

データサイエンティストといった職種が取りざたされる

クラウドが創造するもの

  • サービスモデルの登場
  • モバイルの躍進
  • ビッグデータの活用
  • ビジネスサイクルの迅速化
  • グローバルマーケットへの進出

すべてコミュニケーションがカギ、ソーシャルメディア(←今日のテーマ)

業務アプリケーションのソーシャル化が始まっている

エンタープライズ向けのソーシャル化は明確なトレンド

なぜエンタープライズソーシャル?

  • クラウド、モバイル、コンシューマライゼーションの波の影響
    • 社内コラボレーションがソーシャル化
    • 顧客とのコラボレーションもソーシャル化
    • ソーシャルメディアが顧客の分析に役立つから

あらゆる業務アプリケーションにソーシャルやコラボレーション機能が組み込まれていく

ソーシャルを基盤にした新しいアイデア

  • 分析
  • コラボレーション、業務ワークフロー
  • アプリケーション連携
    • 在庫管理システムで、商品在庫が少なくなるとアプリケーションがツイートするなど
  • ボット (トリガー、リマインダー、予測など)

エンタープライズソーシャル疲れ?

  • メールを見て
  • 社内ソーシャルの Chatter を見て
  • TwitterFacebook を見て
  • Instant Message を見て
  • 開発者用の Wiki を見て
  • チケット管理システムを見て

  • コラボレーションのサイロ化?
    • 業務システムのサイロ化は SOA で解決すると IBM は言っている
    • サイロ化されたコラボレーションも疎結合が必要ではないか
  • ソーシャルにも Enterprise Social Bus のような何らかの共通基盤が必要では?

標準技術も出てきている

  • OpenSocial 2.0
    • アクティビティストリーム
    • ガジェットフォーマット
    • OAuth 2.0
    • 共通コンテナ
  • OpenID Connect

結び

  • ソーシャル機能は業務アプリケーションの基盤のひとつに
  • 基盤技術の主流が何になるかはまだ分からない
  • OpenSocialOpenID Connect などの標準も出てきているが、今は製品ごとの API のほうが一般的か

つぎのチームワークへ Work in the Future (Google 藤井 彰人氏)

ユーザ側の変化

  • グローバル
  • みんなで
  • スピード

テクノロジーの変化

新しい IT の指針

「個人の生産性、物理的なオフィス、標準的な勤務体系、会社のデバイス」から……

  • Any WHERE どこでも
  • Any TEAM どのチームとでも
  • Any TIME いつでも
  • Any DEVICE どんなデバイスでも

コラボレーション基盤としての Google Apps

  • API の集合と捉えれば、新しい業務基盤になる

テクノロジーの変化

Idea comes from everywhere

  • Google の社是のようなもの

Go Higher

Creativity Loves Constraint

  • Google は世界中の情報を整理する」→アホか、と言われた
  • 制約を作ることで、新しい手法、新しいサービスが生まれる


Enterprise Social (マイクロソフト 西脇 資哲氏)

Enterprise Social in Microsoft

マイクロソフトの社員のほとんどが Yammer でコミュニケーションをしている


ソーシャル活用のための分析技術 (日本アイ・ビー・エム株式会社 村上 明子氏)

エンタープライズ・ソーシャル実現のための 4 つの要素

  • Reach
    • 人がどこにいようと、どこで仕事をしていようとつながる
  • Engage
    • 状況に応じて人が必要な情報へアクセスできる
  • Discover
    • 新しいビジネスの知見を得るためにデータをモニタリング & 分析
  • Act
    • ビジネスを優位に進めるために知見・インテリジェンスを活用

ソーシャル・ツール活用のための 3 つの要素

  • コンテンツ
    • 人のスキル、経験、嗜好、オンラインでの評判などを構造的・体系的にデジタル化
  • 人とデータの解析
    • 要求ごとに素早く構築可能な解析プラットフォームが人中心プロセスの最適化を実現
  • 人の活用化
    • 状況やニーズにコンテンツを適応させ、さまざまなデバイスを使って、多様な人材をまたがるコミュニケーションを促進

リスクマネジメントとしてのソーシャル分析

  • 注目されているニュースが、どのような評判とともに拡散していくかを可視化
  • 例: 日本 IBM 社長交代


What is Social Enterprise? 企業システムの近未来を夢想する ──作るから、繋がる、繋げるへ (セールスフォーム・ドットコム 関 孝則氏)

避けられない波としてのソーシャル

  • ソーシャルメディアやツールの急速な興隆は、消費者と企業との関係を大きく変え、さらに企業内での社員と組織の関係を変えようとしている

ソーシャルの中での企業の繋がり方

  • お客さまの声、製品の改善アイデア、問い合わせ、広告などへの反応
  • 社内情報の発信、新製品の発表、問い合わせへの回答、広告・宣伝・広報

ソーシャルの顧客の声を聞く

  • Radian6によって企業は以下のような質問に対する回答を得られる
    • どのイベントが一番注目されたか?
    • 我々の発するメッセージやブランドはどのように受け止められているか?

顧客のソーシャルプロファイルを

  • 顧客を満足させるには、顧客を知り、好みを把握すること

企業の中でのソーシャル

  • 発見し
    • リアルタイムな情報入手
    • リソースを探す
  • 繋がり
    • 専門家と繋がる
    • ファイルとデータのフォロー
  • 対話する
    • プロジェクトやプロセスをマネージ

企業に関わるソーシャルなコミュニティを

  • 信頼のブランドのもとに集う、企業と関連したコミュニティーのソーシャルアプリ
  • Chatter 上に開発されたコミュニティー

分断されてきた企業データ、必要な情報は入手困難

  • 定型データはアプリケーション単位で整理されてきた
  • 非定型データは種類別にしか整理の試みはなかった
  • 非定型と定型の融合は実現されなかった

ソーシャルで今までのデータと繋がる

  • レコードの変更の履歴、関連したメンバーの対話、ファイルが紐付いて記録され共有される
  • メールやファイルサーバーでの共有は不要に

プロセスの定型データとソーシャル化の非定型の融合

  • プロセスの定型と非定型データの関連づけにより、必要な情報のもとで流れが促進され、高い生産性が実現される
    • 今までは業務プロセスの定型データとコラボの非定型データは分離
    • Chatter では Force.com の定型データにコラボが紐づき、変化が通知される

Chatter でアプリケーションをソーシャル化

  • bmc software、QlikView の事例


タブレット法人導入のトリセツ (大木 豊成氏)

自己紹介

なぜタブレット導入についてお話しするのか

事例 (2010/8〜)

  • ある製薬会社
    • 全社員(3 千人以上)に渡す
    • 情報システム部門の対応
      • 社内システムに繋いでいいのか?
      • 社内 Wi-Fi に繋いでいいかどうか
      • 資産管理をどうするか未定
  • 情シスめんどくさい

  • タブレット導入が目的ではない
  • 導入するなら「すぐに」
  • Speedy & Easier
    • 端末はすぐに手に入る
    • アプリもすぐに買える
    • クラウドサービスもすぐに

導入の現場で聞く声

  • システムやサンの見積もり待ち
  • 情報システムの回答待ち
  • 情シスに反対された
  • 情シスに「導入は大変だよ」と脅された

導入がうまく行く企業とうまく行かない企業

  • うまく行く企業
    • IT 担当が前向き
  • うまく行かない企業
    • IT 担当が後ろ向き

IT 担当の言い分

  • 実際に使う部門は、何をしたいのだろう?
    • ユーザー部門の仕事を理解している?
  • コンプライアンス上問題ないのか
  • iPad のセキュリティは大丈夫?
    • 何が具体的に心配? 何をクリアすれば OK?
    • 根拠泣き不安は無視しましょう(野村證券)
  • 他社はどうやっている?
    • 僕に聞いてくださいよ
    • 調べても分からないと思う
    • なぜ分からないのか
      • ANA、CA マニュアル iPad 化 (朝日新聞 2012/3/30)
      • LIXIL が 6 千台導入
      • 野村證券iPad 8 千台導入──営業スタッフが活用
      • ニュースに出ている以上のことはどこにも書かれていない
  • アプリの購入ルールも俺たちなの?
    • 違うと思う
    • きちんと関係者を巻き込もう

コミュニケーションの変化

  • 10 年前は何をしていたか?
    • 僕は Yahoo! BB の仕事をしていた
    • メールが当たり前
  • 現在、当社は社内 SNS を利用 (Zyncro)
    • 埋もれない
    • 議論が深まる
    • 会議前会議ができる
    • 取引先も巻き込む
  • Facebook のクローズドなコミュニティを作ってやっている会社もたくさんある

何がどう変わったか?

  • 必要な時に、必要な人と、必要なだけ情報共有ができる
  • 裏を返すと、必要でない人を抜きにコミュニケーションができる
    • 情シスを抜きにして外部の IT 企業の人を招いて議論
  • ツイッターで情報収集、フェイスブックで告知、LINE で飲み会の連絡……10 年前に考えました?
  • ツールが変わったことで超スピード化

Today's Message

  • Do not wait...
  • 待っていないで先に進むことの重要さ
  • 垣根越しに傍観していませんか?
  • ユーザー側にも言えること
  • 「べき論」はさておき、どちらが先に動くか

開発の話

  • レビュー、お嫌いですか?
  • 問題が起きる開発現場には……
    • 中間レビューを嫌うエンジニア
    • レビューなしで進めようとするエンジニア
  • システム開発を本棚に喩える
    • 「高さ 2m の本棚を作って」
    • 本棚と言ってもいろいろ
    • 求められている本棚にするには
      • まず 2m の板を見せる
      • 枠になったところで見せる
    • でも、作り終えてから見せてない?
      • 「見せるまでに時間が掛かりすぎ」
      • 「ドアは頼んでないから払わないよ」
      • 「イメージと違った」
      • 最悪はやり直し
  • 古くて新しいキーワード: コミュニケーション
  • 10 年前は──
    • 「僕はエンジニアなので、コミュニケーションとかしたくないんです」
    • 「僕は課長ですけど、開発メインなので部下とコミュニケーションしたくない」
  • 現在は、コミュニケーションスキルのある人に仕事が集中している?」
  • エンジニアの仕事は PC の前だけではない
  • じゃあ、何でもかんでも僕らがやるの? →No!
  • 自分や自社の得意なこと、不得意なことを整理
    • 不得意なことが分かれば外部に依頼することもできる
  • 一方で、ユーザー部門では──
    • タブレット導入は自分たちの課題
    • まして、どう使いたいのかは自分たちの大きな課題
    • 実はこれは IT まわりだけの問題ではない
      • 日本中に「評論文化」が蔓延している

タブレット導入のプロセス

  • 検討→導入→運用 ?
  • 成功する導入プロセス:
    • 購入→検討→試し→検討→導入→運用
    • とりあえず導入してまず誰かが使う
    • 持ってから考える。結構アイデアが出てくる
    • パイロット導入、業務のバグ出し
    • 実際の活用場面でユーザーを巻き込む
    • 導入の際は説明会を開く
    • 運用する。紛失やパスワードなどの問題が出てくる
  • ソフトウェアが介在するのは──
    • 導入……要らない
    • 試し……市販のアプリで。業務面からのバグ出し重要
    • 検討(2)……ここに反映する
  • ソフトウェアエンジニアはソフトウェアだけでいいの?
    • 通信の知識は通信会社にお任せすることも多い
    • PC と併用する企業は少なくないので Pocket Wi-Fi を導入するも、よく分からない
    • 高層階のオフィスなのにクロッシィを導入して使えない、などの例も
    • ある程度は詳しくないといけない。お願いするのと丸投げするのは違う
  • 「え、これからはマルチプレイヤーになれと?」→Yes かつ No
    • 自分自身を磨く
    • 餅は餅屋、餅屋と組む

顧客企業が求めるもの

  • 「導入前→導入時→導入→導入後」のプロセスのうち、SIer はどこからどこまで関わるか?
  • 開発者抜きのプロジェクトも
  • 僕の結論: エンジニア不在になってはいけない
    • ホンネはみんなそう思っている
    • でも面倒なので開発者抜きで進めているのが実態
  • 作って終わりの時代ではなくなった
  • 啓蒙が必要
  • 仕事が増えたと考えるか、活躍の場面が増えたと考えるか
    • 僕はチャンスだと思う
  • 知識の範囲が広がると活動範囲も広がる
  • そういう人とお仕事をしたい

Windows 業務アプリケーションを iOS/Android で利用 (竹内 裕治氏・横谷 隆太氏)

コンシューマライゼーション

モバイル対応のアプリケーション

  • 写真・動画を駆使した情報系アプリ→新規開発に意欲的だが用途は限定
  • 日常もっとも利用する業務系アプリ→既存システムからの移行が困難だが実用性は高い

Windows 業務アプリのモバイル対応のオプション

  • Citrix Mobility Pack──最小の手間とコスト
  • Citrix Mobile App SDK──それほどでもない手間とコスト
  • HTML5──そこそこの手間とコスト
  • iOS/Android ネイティブ開発──かなりの手間とコスト

アプリケーションのライフサイクルも考えるべき大きなポイント

解決策──デスクトップ仮想化

  • デスクトップ & アプリケーション as a service
  • データが端末に蓄積されず、高いセキュリティを実現

Citrix Mobility Pack

タブレットスマートフォンに最適化されたデスクトップ

  • 仮想デスクトップ/アプリ画面転送
  • Windows 資産をそのまま活用
  • 低コスト
  • 互換性
  • さまざまな機種、画面サイズ
  • タッチベースで使いやすく
  • セキュリティ

Mobile Application SDK for Windows

Mapdemic 適用事例

Mapdemic

  • XenApp Mobile SDK ベースの Windows アプリケーションマイグレーションサービス
  • 販売在庫管理のデモ
    • プログラムは同じもの。ビジネスロジックを変更する必要がないのがメリット
    • iPhone 独自の機能として、予約リストの名前をタップして「Start Call」をタップするとお客さまに電話を掛けることができたり、店舗名をタップしてから「Send SMS」をタップするとショートメッセージを送信したりできる
    • Visual Basic から SDK を呼び出すだけで実現できている
    • iPad でも同様のデモ。製品名をタップすると製品の写真が表示される
  • 既存のアプリケーションのビジネスロジックをいじらずに GUI 部分だけを書けるのは魅力
  • コスト面でも有利

まとめ

  • どこにいても会社と同じデスクトップ環境で仕事ができる
  • モバイルワークスタイル = 変化の時代への対応
  • 膨大な Windows 資産や Windows のリッチな開発環境を有効活用
  • コストを抑えながら Windows アプリの付加価値や生産性を向上
  • 企業競争力を上げることができる
  • Windows が軸足の時代は当分変わらないと思うので、ひとつのアプローチとして検討していただきたい