SIer と受託開発、エンジニアの未来 (後編)

SIer と受託開発、エンジニアの未来 (前編)」の続きです。前回から間が空いた割にうまくまとまっていませんが、ご意見やご感想などよろしくお願いします。



受託開発を否定的に見る人の意見でよく見るのは、「受託開発という、いわば日銭を稼ぐ作業ではソフトウェア産業の持つスケールメリットを生かせない」というものだ。かく言う私も、新卒で入った地方の独立系ソフトハウスの面接で、社長にソフトウェア業界について意見を求められてこう語った。「無から無限大を産み出せる可能性があるのがソフトウェア産業の魅力です」と。これは面接受けを狙ったものではなく本心である。その会社に入社して、私はパッケージソフトでもウェブでもない SI の事業部に配属になったけれど。

パッケージやウェブ開発はうまくいけば青天井であるのに対し、受託開発は出来高が最初から決まっている。ならば利益率を上げるという方向性で創意工夫をしている会社もある。有名なところでは、株式会社スターロジックは、業務アプリケーションのパターンを数多く研究し、Excel マクロでモックアップからデータベース定義、実際のコードの大半を吐き出すツール群を自社制作した結果、人がコードを書くのは全体の 1 割ほどになり、「1 タスク 8 万円」という画期的な価格体系を打ち出した。これはイノベーションと呼ぶに値すると私は思う。

折りしも、株式会社アプレッソの小野和俊さんがご自身のブログに「『小さなソフトウェアベンダー』という選択肢」というエントリーを書かれた。受託開発について語っているわけではない小野さんのエントリーを引き合いに出すのは我田引水の誹りを受けるかもしれないが、エンドユーザーから直にシステム開発の相談を受け、システムのみならず業務改善の提案などを経て少数精鋭でシステムを組んで納品するような「小人数高収益企業」を目指す戦略はひとつの正しい方向だと思う。

受託開発という言葉には、同業他社からの下請けというイメージがどうしてもまとわりつき、それが否定的なイメージを呼ぶ面もあるのではないか。しかし、周囲を見渡せば、大手の SIer に発注するほどの規模ではないが IT 化を望んでいる企業や組織がたくさんある。私自身、ある小さな案件を個人で受注した時、発注者に「こういうシステムをどこに頼んだらいいのか分からなかった」と言われたことがある。その言葉を聞いて、この層は肥沃の地かもしれないと思ったものだ。

卓越したソフトウェア開発技術でこの層へ切り込み、創造性と生産性を遺憾なく発揮して高い利益率を叩き出せる会社に私は憧れるのだが、ウェブ志向の強い昨今ではこのような会社はあまり魅力的に映らないのだろうか。